法制審議会家族法制部会は、2023年1月27日、離婚後の親権制度について、父母双方が親権を持つ「共同親権」を原則とする民法改正案の要綱案をまとめた。
共同親権とは?
共同親権は、離婚後も父母双方が子どもの親権を持ち、子育てに関わる制度。一方、現在の日本の民法では、離婚後は父母のどちらか一方のみが親権者となる単独親権が採用されている。
共同親権の肯定的な面
共同親権制度には、以下のような肯定的な面もある。
- 子供が離婚した後でも両親の愛情やサポートを受けることができるようになる。これにより、子供の気持ちやメンタルに寄与することが期待できる。
- 両親が共同で子供の養育に取り組むことで、親同士の信頼関係や協力関係が深まることも可能性としてなくはない。これにより、離婚後の家族関係が安定し、子供にとって安心感を与えることができるだろう。
共同親権の否定的な面
しかし共同親権制度には、以下のような問題点や懸念が指摘されている。
- 親権を共有することで、元夫婦間のコミュニケーションが困難になる可能性が考えられる。特に、離婚原因となった問題が解決されていない場合、共同親権は緊張関係を助長することが懸念されてる。
- 子供の養育に関する意見や判断が、双方の親で分かれている場合、子供に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、片方の親が厳格な教育方針を持っているのに対し、もう片方が甘やかす傾向がある場合、子供は混乱した状況に置かれることは間違いないだろう。
DV被害者や子どもへの二次被害
離婚の原因がDVの場合、共同親権は被害者にとって大きな負担となる。DV加害者と子育てに関わることは、被害者の安全を脅かし、子どもに二次被害を与える可能性も十分考えられる。
制度運用における課題
共同親権を円滑に運用するためには、父母間のコミュニケーションや協力が不可欠だ。しかし、実際には、父母間の関係が悪化しているケースが多く、制度運用における課題はまだまだ山積みだ。
共同親権導入に対する不安視する声
上記の問題点から、共同親権導入に対して以下のような不安視する声も多い。
- DV被害者や子どもが十分に保護されない
- 子どもにとって負担が大きくなる
- 制度が機能しない可能性
共同親権導入はやばい!という声も
共同親権はいつから?
共同親権は、まだ正式に法律で決定されていない。
2024年1月27日、法制審議会家族法制部会は、離婚後の親権制度について、父母双方が親権を持つ「共同親権」を原則とする民法改正案の要綱案をまとめた。その後、法務省はパブリックコメントを実施し、2024年1月19日に意見募集を終了。
法務省は、パブリックコメントの結果を踏まえ、法案を修正し、2024年通常国会に提出する予定だ。法案が成立した場合、2025年4月に施行される見込みだ。
今後のスケジュール
- 2024年3月頃:法務省が法案を閣議決定
- 2024年4月:法案が国会に提出
- 2024年6月頃:法案が成立
- 2025年4月:施行
注意事項
上記の日程はあくまで予定であり、変更される可能性は当然あるだろう。
共同親権 海外では?
ヨーロッパ
- フランス、ドイツ、イギリスなど多くの国で、離婚後も父母双方が共同親権を持つのが原則。
- 父母間の合意が難しい場合は、裁判所が子の監護方法を決定する。
- 共同親権を円滑に運用するための支援制度が充実している国もある。
アメリカ
- 各州によって制度が異なるが、多くの州で離婚後に共同親権を選択することが可能。
- 共同親権を選択する場合は、父母はParenting Plan(子育て計画)を作成する必要がある。
- Parenting Planには、子の養育費、面会交流、教育などに関する事項が記載されている。
アジア
- 韓国、台湾などでは、近年共同親権の導入が進んでいる。
- しかし、日本の民法と同様に、単独親権が原則となっている国も多いのが現状だ。
共同親権導入の議論
共同親権は、子どもの権利を守るという観点からは重要な制度であるといえるだろう。しかし、同時に、DV被害者や子どもへの二次被害を防ぐための対策、父母間の対立を解決するための仕組みなど、解決すべき課題も山積しているのも事実だ。
今後、共同親権導入の議論を深めるためには、これらの問題点を真摯に受け止め、子どもにとって最善の利益となる制度設計が求められる。
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